私的感想:本/映画

映画や本の感想の個人的備忘録。ネタばれあり。

「14歳」

2007-08-26 18:22:16 | 映画(さ行)
   
2006年度作品。日本映画。
14歳だった深津は飼育小屋の放火を疑われ、教師を彫刻刀で刺したことがあり、同級生だった杉野はその事件を目の当たりにする。その後、教師となった深津と、会社員の傍ら、知り合いにピアノを教える杉野は偶然再会をし、それぞれ14歳の生徒と向き合うこととなる。
監督と主演は「ある朝スウプは」の廣末哲万。
出演はほかに並木愛枝 ら。


14歳というのは微妙な時期だ。思春期真っ只中で、大人になる過程にある不安定さがもっとも現れる時期がその年齢なのだろう。
タイトルに出ているように、これは14歳を題材にした作品だが、基本的にそんな不安定な時期のイヤな側面を存分に描いている。

特に和恵は最悪である。「ヒマなんだけど」というセリフを使って友情を押し付けるくせに、その友情を平気で裏切ったり、先生を傷付けることも辞さない。自分中心で独善的で、自己愛に満ちている。多分彼女は大人になってもそういうタイプのままだろうけれど、ある意味、この年頃の自意識を彼女は象徴しているといえるだろう。
そのほかの人物たちの中にも、性的な面に興味を持ったり、暴力でとりあえず訴える、考えなしの部分など、不安定な時期の不安定な感情が描かれている。
それは僕個人のイヤな記憶を揺さぶって、ずいぶんと落ち着かない気持ちにさせてくれる。最高に最低な映画だ。

だがそんな14歳の姿を描きながら、これは14歳の感情を忘れた大人たちに向けた映画だという印象を受ける。
大人になってしまうと、この年齢特有の自意識や感情などを必ずしもしっかりと思い出すことができるわけではない。それは最後のセリフではないが、そんなにこの年齢の子供たちをかまってやれるわけではないからだろう。
しかしときにしっかり彼らに向き合わなければならないときがある。それは彼らの時代に起こした記憶がときに将来の自分を苦しめるからだ。
僕はいじめた相手を一生忘れなかったらどうしよう、というセリフにハッとさせられた。相手を傷付ける。その記憶がときには自分の心を傷付けることもあるのだ、ということを思い知らされる。

観客に個人的の記憶を揺り起こさせると同時に、大人になってしまった者の責任と宣言をこの映画から感じ取ることができる。
確かに最悪だと思うが、心を衝く作品でもある。

評価:★★★★★(満点は★★★★★)


制作者・出演者の関連作品感想:
・高橋哲万出演作
 「天然コケッコー」
・香川照之出演作
 「嫌われ松子の一生」
 「ゲド戦記」
 「憑神」
 「バッシング」
 「花よりもなほ」
 「ゆれる」

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 『村田エフェンディ滞土録』 ... | トップ | 『夜叉ヶ池・天守物語』 泉鏡花 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

映画(さ行)」カテゴリの最新記事